2025年9月22日月曜日

2025(令和7)年度税制改正に関する注意事項など

 以下は、私が担当する「税法B」で配布する講義用資料の一部を、一部修正の上で掲載するものです。

 ★2025(令和7)年度税制改正に関する注意事項2025年度税制改正の概要については「令和7年度税制改正大綱」(自由民主党・公明党、2024年12月20日。以下、2025年度与党税制改正大綱)および「令和7年度税制改正の大綱」(2024年12月27日閣議決定。以下、2025年度政府税制改正大綱)を参照するとよい。但し、実際には、これらに示されている内容が変更された上で「所得税法等の一部を改正する法律案」(内閣提出法律案第1号)および「地方税法及び地方税法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案」(内閣提出法律案第2号)として第217回国会に提出され、「所得税法等の一部を改正する法律」および「地方税法及び地方税法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案」として成立し、公布された(1)

 2025年度税制改正に関する解説書や解説記事の多くは、2025年度与党税制改正大綱を基にして書かれている(2)。従って、こうした解説書や解説記事を読む際には、いつ公表されたか、内容が最新のものとなっているかという点に注意しなければならない。

 (1)「所得税法等の一部を改正する法律」は令和7年3月31日法律第13号、「地方税法及び地方税法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案」は令和7年3月31日法律第7号である。なお、所得税法等改正法の案は、衆議院において修正を受けている。

 (2)「税法B」および「法学特殊講義2B」の教科書に付せられた追録も同様である。

 ★★2025(令和7)年度税制改正における所得税・個人住民税の改正 その1 給与所得控除(3)

 〔1〕2025年12月1日より、所得税法第28条第3項第1号および同第2号は次のように改められる(取消線および赤字が改正部分)。

 「前項に規定する給与所得控除額は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額とする。

  一 前項に規定する収入金額が百八十万円百九十万円以下である場合 当該収入金額の百分の四十に相当する金額から十万円を控除した残額(当該残額が五十五万円六十五万円に満たない場合には、五十五万円六十五万円

 二 前項に規定する収入金額が百八十万円百九十万円を超え三百六十万円以下である場合 六十二万円六十五万円と当該収入金額から百八十万円百九十万円を控除した金額の百分の三十に相当する金額との合計額」

 〔2〕次のものについて改正を行う。

 所得税法別表第二〔給与所得の源泉徴収税額表(月額表)〕

 所得税法別表第三〔給与所得の源泉徴収税額表(日額表)〕

 所得税法別表第四〔賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表〕

 所得税法別表第五〔年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表〕

 改正後の別表第二、別表第三および別表第四は、2026(令和8)年1月1日以後に支払うべき給与等について適用する。

 〔3〕2025年12月1日より、道府県個人住民税および市町村個人住民税における給与所得控除の最低保証額などが変更される。これは所得税法第28条第3項第1号および同第2号が改正されたことに伴うものであり、地方税法の改正は行われていない(4)

 (3)他の改正点(所得控除など)については、後の回において扱う。

 (4)地方税法第32条第2項、同第313条第2項。佐久間信彰「令和7年度地方税制改正の方向」税2025年4月号17頁も参照。

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